日産自動車、「携帯電話協調歩行者事故低減システム」の市民参加による大規模実験を開始

日産自動車株式会社(本社:東京都中央区銀座 社長:カルロス ゴーン)は23日、クルマと歩行者との交通事故低減を目指して、歩行者が所持する携帯電話と車両間の通信を活用した「携帯電話協調歩行者事故低減システム」に一般市民が参加する大規模な実証実験を神奈川県厚木市において11月1日から12月27日まで実施すると発表した。

実証実験のしくみ

大規模実証実験のしくみ

同社は、2007年4月より、クルマと歩行者が所持する携帯電話を通信させて車両の進行方向前方に存在する歩行者を検出し、車両へ注意喚起をする「携帯電話協調歩行者事故低減システム」の検証実験を神奈川県内の歩行者事故発生地点にて行ってきた。今回は、2008年11月1日(土)から12月27日(土)の間、神奈川県厚木市の鳶尾(とびお)、みはる野、まつかげ台において、この地区在住の一般市民の中から、500人の歩行者モニターと200人のドライバーモニターの参加を得て、大規模な実証実験を実施する。クルマと歩行者との交通事故低減を目指して、多数の一般市民が参加する実証実験を市街地において実施するのは、世界初の試みとなる。尚、携帯電話の通信機能については、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(本社:東京都千代田区 社長:山田 隆持)の技術協力のもと、開発を進める。この実験により、これまでの検証の段階から、同システムの実用化に向けた具体的なシステム開発へと移行し、将来の普及を目指して大量のデータと一般市民の意見を広く収集する。

この「携帯電話協調歩行者事故低減システム」は、歩行者が所持する携帯電話のGPS測位による位置情報と車両のプローブ情報(走行情報)をパケット通信によって収集し、車両の進行方向前方に存在する歩行者に対し、注意喚起が必要と判断した場合に、ドライバーへ歩行者の存在情報を、音声とナビ画面への表示によって提供するシステムである。2007年に開始した検証実験では、同システムの導入により、ドライバーに危険を予知しながら運転するよう促す効果が確認できており、見通しの悪い交差点が多い住宅街等において、安全運転支援の高い効果が期待される。

今回の実験では、歩行者モニターへは同システムに対応した実験専用携帯電話を貸与し、ドライバーモニターには、同システムを搭載した車両を貸与する。どちらのモニターも、実験のための特別な行動をせず、実験エリア内の市街地を普段通りに歩行、走行するだけであるため、リアルワールドでのデータ収集が可能となる。

今回の実証実験の主な目的は、以下の通りである。

(1)安全運転支援効果の評価
ドライバーが、見えにくい場所に歩行者が存在することを同システムより報知および注意喚起を受けた場合に、アクセルを離して減速するかどうかといった運転行動の変化を定量的に把握し、評価する。

(2)情報処理ロジックの最適化
携帯電話の移動速度やサーバー上の地図位置を確認し、路上の歩行者であることを判別する情報処理ロジックを、実際の住宅街における歩行者の行動傾向に基づいて検証する。

同社は、日産車がかかわる死亡重症事故を2015年度に1995年度比で半減するという目標をかかげている。死亡事故のうち、歩行者事故が占める割合は約3割に達するが、「見えにくい場所にいる歩行者」に対する事故は、クルマ単独での対応が難しい。このため、これまでもSKYプロジェクト*1の中で、スクールゾーン等での歩行者事故の低減を目指した速度超過時情報提供システム*2の開発、実験を行い、また日産テクニカルセンターの事業所構内では、歩行者の見落とし不注意による事故を低減させる研究を目的として、道路横断歩行者を優先した信号機を設置するなど、歩行者事故の低減に向けた研究や技術開発に積極的に取り組んできた。本実験もこのSKYプロジェクトの一環として進めており、同社は今後、ITS*3を活用した取り組みの幅広い普及を目指す方針である。

  • *1: SKYプロジェクト: SKY(スカイ)は、Start ITS from Kanagawa, Yokohamaの略。2006年10月より神奈川県にて実施している、情報通信による交通環境データの活用により、交通事故低減と渋滞緩和を促進することを目的としたITS実証実験。株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ、パナソニック株式会社、株式会社ザナヴィ・インフォマティクスとともに実施。
  • *2: スクールゾーン等で制限速度を超過して走行しているとき、音声とナビ画面でドライバーへ報知し、走行速度の抑制を促す。
  • *3: ITS: Intelligent Transport System: 人、道路、車両を情報でつなぐ高度道路交通システム

以 上