日産自動車、メタノ-ル改質式燃料電池車の走行試験を開始

1999年5月13日
日産自動車株式会社
広報部

日産自動車、メタノ-ル改質式燃料電池車の走行試験を開始

 日産自動車株式会社(本社:東京都中央区銀座、社長:塙 義一)では、地球環境問題に対応する種々の代替エネルギ-車、低公害車の研究開発を積極的に進めているが、このたびメタノ-ルを燃料としたメタノ-ル改質式の燃料電池車を開発し、走行試験を開始した。

 今回日産自動車が研究開発したメタノ-ル改質式燃料電池車は、メタノ-ルと水を、触媒を用いて化学反応させることにより水素を発生する「メタノ-ル改質器」を備えた燃料電池システムを搭載しているため、補給するのは液体燃料であるメタノ-ルのみであり、近い将来の自動車用パワ-ユニットとして高い実現性を有している。

(注)燃料電池は、水素と酸素の結合によって生成される電気エネルギーを直接取り出す装置で、排出物が水のみのクリーンな動力源として注目されている。燃料となる水素を直接自動車に貯蔵する方法と、メタノールを貯蔵、改質して水素を取り出す方法の2種類がある。

 また、メタノ-ルの改質温度はガソリンエンジンやディ-ゼルエンジンの燃焼温度に比べて格段に低いため、NOxはほとんど発生しない。さらに、HCやCOも極めて低レベルに抑制できるため、大気並みにクリ-ンな排気性能を実現できるポテンシャルがある。また、メタノ-ルは天然ガスなどから比較的容易に製造できるため、代替エネルギ-性の点でも優れている。

 このメタノ-ル改質式燃料電池車には、日産自動車が既に実用化しているルネッサEVや、現在公道走行テストを実施しているティ-ノハイブリッドと同様の、高効率なネオジム磁石同期モ-タ-やリチウムイオンバッテリーが組み合わせて採用されており、走行状況に応じて、燃料電池の電力で走るモード、バッテリーの電力で走るモードを切替える電力制御を実施している。燃料電池自体が高い効率を有することに加え、減速時の制動エネルギーを効率良く回生することによってシステムとしての大幅なエネルギー効率の向上が可能である。これらのシステムの高効率化、小型・軽量化等により、将来的には、現状のガソリンエンジン車に比べて約3倍の燃費向上が期待できる。

 日産自動車では、メタノ-ル改質式燃料電池車の実用化に向けて今後さらに研究開発を進めていく。

 メタノ-ル改質式燃料電池車の主な特長は以下の通り。

(1)大気並みにクリ-ンな排気
 燃料電池単体からの生成物は水のみであり、本質的にクリーンな動力源と言うことができる。メタノールを改質した際には、改質器から排気が発生するが、触媒を用いての改質であるため、低温でかつ極めて効率が高く、NOx、CO、HCは殆ど排出されず、大気並みのクリーンな排気を実現させることが可能である。

(2)メタノ-ルは石油代替エネルギ-の有力候補 
 メタノール燃料は「石油代替燃料」として期待される 天然ガスから製造されるが、将来的には バイオマス(植物)や水素ガスと炭酸ガスなど「再生可能エネルギー」からの生産が可能となることから代替燃料の有力候補のひとつとして期待されている。

(3) 電力制御による大幅な燃費向上 
 メタノール改質式燃料電池システムの最も効率のよい領域で運転できるように、走行状況に応じて、燃料電池の電力で走るモード、バッテリーの電力で走るモードを切替える電力制御を行っている。ネオジム磁石同期モーター、リチウムイオンバッテリー等の高性能ユニットを使用し、コンパクト化、高効率化を図っている。また、減速時には、モーターが回生発電を行ない、バッテリーを充電する。この様に、動力源を最適に使い分けることにより、もとより効率の高いメタノール改質式燃料電池システムをさらに高効率化し、大幅なエネルギー効率の向上を実現している。

以 上