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「ニッサン アリア コンセプト」 と「ニッサンIMk」:EV時代の新たなデザインの方向性を示唆するコンセプトカー

エクゼクティブ・デザイン・ダイレクター 田井 悟が技術と緻密さで生まれ変わった日産ブランドのデザインを語る
エクゼクティブ・デザイン・ダイレクター 田井 悟

日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、代表執行役:山内 康裕)グローバルデザイン本部のエグゼクティブ・デザイン・ダイレクターである田井 悟は、日産ブランドの新たなデザインの方向性を、シンプルかつクリーンと説明しました。

田井は未来の生活において、見るものや触れるものの少ない生活は、より豊かに暮らすことにつながると考えています。

第46回東京モーターショーでは、日産のデザインの新しい方向性を示す最初のヒントとなる「ニッサンIMk」、そして、その方向性を一層明確にした大胆なデザインの「ニッサン アリア コンセプト」の2台のコンセプトカーを発表しました。この2台の電気自動車(EV)は、クルマがエネルギーをどのように使い、どのように走るのか、そして社会とどのようにつながっていくのかを定義するブランドビジョン「ニッサン インテリジェント モビリティ」によって実現した、新しいデザインの幕開けを約束するものです。

2017年東京モーターショーで披露されたコンセプトカー「ニッサンIMx」の後継モデルである「ニッサン アリア コンセプト」は、近い将来の日産クロスオーバーEVのデザインを示唆しています。「ニッサンIMk」は、軽自動車のイメージを一新し、シックで新しいデザインとコンパクトながらパワフルな走りを提供し、幅広いお客さまのニーズに応えます。両モデルは、シームレスなコネクテッドカー技術と一体感あるミニマムなデザインを電動化と掛け合わせた、日産の新しいデザインフィロソフィーを体現しています。

田井は、あらゆるものが繋がる現代のライフスタイルにシームレスに溶け込む、ニッサンブランドの新たなデザインの方向性について語りました。

Q:何故、新たなデザインの方向性を打ち出したのでしょうか?
田井: 「ニッサン アリア コンセプト」と「ニッサンIMk」は、「ニッサン インテリジェント モビリティ」を象徴する最新のデザインです。両モデルは、シティコミューターからファミリー向けのクロスオーバーSUVまで、「ニッサン インテリジェント モビリティ」の広がりを示しています。どちらのモデルもクリーンで力強い駆動力を、瞬時に滑らかに発揮するとともに、将来のコネクティビティと自動運転技術を搭載しています。

Q:新たなデザインランゲージのポイントは何ですか?
田井:最先端技術を介在させることで、デザインやそのコンセプトをお客さまのライフスタイルに融合させるということを重視しています。これは、私たちが考える「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」の鍵を握る要素です。また、日本ならではのミニマルなアプローチは、「ニッサンIMk」のシンプルでありながら印象的な外観や、空気抵抗を最小化した「ニッサン アリア コンセプト」の滑らかなボディなど、主にクルマのフォルムに反映されています。日本ならではの方法で、EVの可能性とドライビングの未来をシームレスなデザインで表現しました。
「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」とは、日本らしい伝統的なテイストを新鮮な視点で新しい時代、そしてグローバルに通用するモダンなデザインに昇華させることです。

Q:両モデルに見られる「伝統的な日本のテイスト」の例を、教えてください。
田井: 両モデルとも、「粋(いき)」、「移ろい」、「間(ま)」、「傾く(かぶく)」など、日本のDNAが息づくデザインを採用しています。「ニッサン アリア コンセプト」 では、私たちが「シールド」と呼ぶフロントグリルの部分に幾何学的な組子の模様を取り入れていますが、この模様はクリアコートとシームレスに馴染んでいます。内装でも、この模様を意識した行灯風の照明で、足元のスペースやドア周りのゆとりある空間を照らしています。
「ニッサンIMk」では趣向を変えて、格子と水引の模様を取り入れました。シールドやルーフのグラフィック、リヤデザインやホイールにもこの模様を意識したデザインを採用しています。

Q:「日本的なミニマリズム」が、なぜ重要なのですか?
田井:車の駆動方式やお客さまの使われ方が変わるにつれて、デザインの手法も変えていく必要がありました。これまでの内燃機関車とは構造も音も全く違うEVの時代に向けて、EVの静かさと力強さを車のデザインにも反映させたいと考えました。クリーンでミニマムでありながら、力強く情熱的で、魅力的でスリークであるという特徴を表現したかったのです。自動車業界の全く新たな動きをシンプルな見た目で表現するのは、容易ではありませんでした。

Q:今回の2つのモデルでは、特に何を重視しましたか?
田井: EVプラットフォームによって実現されるプロポーションとあらゆる可能性です。「この新しい独自のプラットフォームに合わせて、どんなデザインを作り上げるか?」「どうすれば、このプロポーションを際立たせることができるのか?」を熟慮しました。
「ニッサン アリア コンセプト」では、車高を上げ、直線的で滑らかなボディを採用し、大きなタイヤに支えられた躍動感を表現しました。 サテンカッパー色のアーチで室内の広さを強調し、これまでのガソリンエンジンを搭載したSUVとは全く異なるモデルを創り出しました。「ニッサン アリア コンセプト」は新開発のEVプラットフォームにより、CセグメントのモデルでありながらDセグメントに匹敵する室内の広さを実現しています。
「ニッサンIMk」では、視覚的にシームレスであることに加えて、コネクティビティの面でもシームレスを表現しようと考えました。それは、プリズムディスプレイやコントロールパネルの配置に表現されています。これらは、デザインにおける「ニッサン インテリジェント モビリティ」の新しいフェーズの幕開けになるでしょう。

Q:両モデルに、何か共通する要素はありますか?
田井: いずれも外観は、美しさと高級感が見事なバランスでデザインされ、EVプラットフォームの可能性を示すプロポーションになっています。両モデルとも前から見ると力強い印象で、グリルではなく、発光するエンブレムを中央部にあしらった「シールド」を配置しています。そして、その下側を柔らかなライティングが縁取っています。
シールドは車の顔であり、強さ、スタイル、インスピレーションを表現します。EVはエンジン冷却用のグリルを必要としませんが、このシールドには運転支援システム「プロパイロット2.0」で使用するレーダー、カメラ、センサーなどを守る意味もあります。

Q:サイズ以外に、「ニッサン アリア コンセプト」と「ニッサンIMk」」の内装には主にどんな違いがありますか?
田井: 「ニッサン アリア コンセプト」の内装は、「ニッサンIMk」より少し暗く、雰囲気のあるものになっています。未来的で有機的な空間へと人を誘う、一体感ある重層的な環境を作り出すため、室内の足元に近い部分は暗い色、上方には明るい色を配色しました。
「ニッサン アリア コンセプト」の内装色は、深いブルーグレーです。「ニッサンIMk」はもっと明るく、カフェやシックなラウンジのような軽快な印象です。 両モデルの違いは、色使いと質感にあります。サイズとクラスは全く違いますが、高級感があり、印象的な色使いのクルマに興味のあるお客さまにふさわしいという点で共通しています。

Q:素材については、種類だけでなく、配置にも違いはありますか?
田井: デザイナーは、インテリアを魅力的で楽しめる空間にするために、常に新たな素材や質感を探し求めています。今回は、重厚に見えるものではなく、堅実性やハイテク感、機能性を感じさせる素材を検討しました。
例えば「ニッサンIMk」は、ステインや指紋を防ぐために表面を防汚剤で処理しています。このクラスの車では珍しい明るい色は、ホームインテリアやカフェで人気のカラーです。「ニッサンIMk」は、耐久性を高めながら、明るく軽快な雰囲気にしたかったのです。
「ニッサンIMk」のカーペットには新たな繊維を採用し、開放的な雰囲気の居心地の良い室内空間を実現しています。これは、このモデルに非常にシックな印象を与えている要素のひとつでもあります。
どちらのモデルにも全体的にカッパー色を使用し、内装に明るさを加えるとともに高級感を演出しています。銅は日本の伝統文化で大きな役割を果たしてきました。職人は銅を使って、工芸品を作り出しました。自動車が新時代の夜明けを迎える感動を表現するため、カッパー色を慎重に配置しました。

Q:「ニッサンIMk」の内装は、軽自動車と思えないほどエレガントでスタイリッシュです。キャビンをデザインする際、何を重視しましたか?
田井: 「ニッサンIMk」のキャビンには開放感があります。明るい気分になれる空間をイメージして、形や色をデザインしました。ベンチシートを採用し、ラウンジやカフェのようなシックな心地良さを生み出しました。ドア、インストルメントパネル、シートは高級感を表現するため、最適な生地素材を用いてリッチな質感を演出しました。もちろん、全てフラットなデザインにすればスペース自体は広くなりますが、それでは美しさが損なわれます。そうしたことは避けたいと考えました。「ニッサンIMk」は、従来の小型車と同等の広さを持ち、ドライバーがこのクルマに乗りたいと感じる、乗員が快適な時間を過ごす空間を備えた高級感のあるスタイリッシュな車を目指しました。

Q:「ニッサンIMk」は、日本の軽自動車クラスのサイズです。EVプラットフォームという新たなコンセプトが、この車のデザインにどんな影響を与えましたか?
田井: 「ニッサンIMk」は、初めてこのサイズの車に乗ることを検討するお客さまに向けた車です。このシティコミューターは電動パワートレインを搭載し、EVプラットフォームを採用したことにより、全く新たな次元のモデルとして誕生しました。スタイリッシュで高級感があり、高い性能を持つ車を好みながら、駐車スペースの確保に心を砕く東京都心の高級車オーナーなど、新たな市場にアピールできます。このセグメントにおいてこれまでにないレベルの洗練されたシックな質感を実現しました。

Q:「ニッサン アリア コンセプト」では、新たなEVプラットフォームはどのような効果を生み出しましたか?
田井: EVプラットフォームのおかげで、室内のフロアをフラットにすることができました。その結果としてパッケージングが非常に効率的になり、足元のスペースに余裕が生まれシートを薄くすることができました。それによって、ドライバーと乗員がくつろいで会話できる、楽しい空間が誕生しました。フラットなフロアは、インテリアの素材をより目立たせます。従来の車の場合、フロアの上には様々な内装のコンポーネントが設置されています。しかし、このモデルではインストルメントパネルとシートを含め、全ての要素が前方と中央に集中しています。そこで素材と色を上手く使うことで、コンポーネント同士をシームレスに融合させました。

Q:両モデルのターゲット顧客は、どんな層ですか?
田井: 「ニッサン アリア コンセプト」のターゲットは、若いファミリー層です。そんなドライバー像を表現する車を目指しました。 予算的には他の車を買うこともできるが、スポーティでクールなEVという点が決め手となって、このモデルを選ぶ、そんなお客さまをイメージしています。
「ニッサンIMk」のターゲットは、この車を運転することで自信とパワーを感じる人です。スタイリッシュで快適な内装デザインが、リラックスできる自分だけの空間を生み出します。そこで、ターゲット層の日常生活の様々な場面を想定し、内装・外装のデザインを通じてそれらを表現するようにしました。

Q:「ニッサン アリア コンセプト」は、量産化が近いという話もあります。完全自動運転を想定してデザインした部分はありますか?
田井: デザインランゲージが進化する中で、将来的な量産モデルを検討する際には、常に自動運転を頭に置いておく必要があります。
「ニッサン アリア コンセプト」は、最新の運転支援システム「プロパイロット 2.0」を念頭においてデザインしました。「プロパイロット 2.0」によってハンズオフで走行する場面では、両足を伸ばしてくつろぎ、このクルマが提案するインテリアのメリットを満喫できます。そして、足元の行灯風ライトに照らされた、新たな空間を体験できます。これは、インテリアデザインを魅力的に見せるだけではなく、スペースの使い勝手の良さを効果的に示しています。

Q:2台のコンセプトカーを通じて、どんなメッセージを伝えたいですか?
田井: 両モデルは、ニッサンブランドのデザインランゲージを新たに定義するものです。「ニッサン アリア コンセプト」と「ニッサンIMk」は最先端を行く車であり、日本のDNAを強く引き継ぎ、「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」のコンセプトを表現しています。「ミニマル」という言葉の意味はシンプルですが、「シームレス」という言葉にはさらに深い意味があります。フラットなドアハンドルや滑らかなパネルのつながりといった物理的な意味だけでなく、「ニッサン インテリジェント モビリティ」の技術や日本の精巧な職人技を表現する精神的な意味合いもあります。つまり、このコンセプトは日産のデザインの未来を決定づけるものなのです。

以上